お客との感覚のずれ、これほど怖い悲劇はない。
自分ではほぐした気になっているが、お客にまったく実感がない。
なぜほぐした気になってしまうのか?
それは、揉みの技術の未熟さにあります。
未熟な治療家が100までほぐしたと思っても、技術の高い治療家にとって、
それは10でしかないのです。
未熟な治療家が100の矯正をしたと思っても、技術の高い治療家にとって、
それは10でしかないのです。
未熟な治療家が100スッキリしただろうと思っても、お客にとって、
それは10しかスッキリしていないのです。
未熟な治療家が100良い状態になったと思っても、お客にとって、
それは10しか良い状態になったと感じていないのです。
大半は親指の感覚ですが、「本当に正常な身体」というものを、知らない治療家も数多くいます。
親指の感覚とは、親指にかかる圧力の変化です。
どの圧力を指に感じたら、痛いのか。
どの圧力を指に感じたら、気持ちいいのか。
どの圧力までが、お客様の痛いと気持ちいいの境目なのか。
それを、ひたすら経験値で補うしかないのです。
痛いといわれたから、力を抜く。そうじゃありません。
力を入れても痛くない方法を習得すべきです。
そこをもっと強くしてと言われたが、これ以上無理。無理じゃありません。体重以上に力を伝える揉み方を習得すべきです。
お客にとって、もっとこうしてああしてと、指示を伝えることさえストレスなのです。
本当は何も言いたくないのです。
何も言わなくても、すべて、効くところは効いて、丁度良く何もかもやって欲しいのです。
未熟さの原因として挙げられるのが、施術する側の人間が、実際に揉まれに行ってないことです。
揉まれている時に、お客様は何を考えているのかさえ知らないのです。
・そこは痛いから柔らかくやってほしい
・そこばかりやってないで、こっちをやってほしい
・ここをやれば、腰がとれるとか言ってないで、腰をもっとやってほしい
・全然浅い、もっと深いところなのに!
・うわー今寝そうだったのに!
・ストレッチなんていいから、もっと揉みほぐして~
・えっ、もう仰向け!?
・あーあ、首おわっちゃった、戻ってもうちょっとやってくれないかな~
・えっ足の裏これだけ!?
・もものウラ一瞬だったな~
・なんでこんなに動かされなきゃいけないの!揉まれに来たのに。
・そんな説明、誰でも知ってるんだから、しゃべるのいいから揉んで!
お客さんのこんな気持ちも知らないで揉んでいるのです。
本当に辛い時、疲れている時、「はぁーやっと来れた」と施術のベッドへ倒れ込むのです。こんなに幸せで、何も考えず、気持ちよく、ウトウトできる瞬間はそうそうありません。
その瞬間を、お客様が思い描く最高の物にするのか、不満やストレスを与えて、最低なものにするのかは、術者にかかっているのです。
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